卵管不妊とその治療
卵管の詰まりを改善することで、自然妊娠の可能性は高まります。
慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 准教授
末岡 浩 先生 プロフィール

慶應義塾大学病院 産科診療部長
日本産科婦人科学会専門医
日本生殖医学会生殖医療指導医
日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会臨床遺伝専門医および指導医
日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医(産科婦人科)
卵管不妊の心得
これから不妊治療にとりかかられる女性にお伝えしたい。不妊症に対しては、その原因別にさまざまな治療法の選択肢があります。通常は子供を望んでいる夫婦が、夫婦生活を2年経過しても子供を授からない場合、不妊治療のステップに進むことになります。中でもこれからお話しするこの不妊の原因は意外と知られておらず、みなさまも、きっと、驚かれることと思います。
卵管に何かしらの原因がある卵管性不妊は、不妊全体の約3割をしめています。その中でも卵管の通りが悪くなっている卵管通過障害とは、卵管の内側が何らかの原因で挟まっていたり、塞がっていたりしていることです。このように卵管不妊は、その原因の頻度が高いにもかかわらず、ひと昔前までは、卵管の内側を治療することは構造の特殊性から難しく、体外受精などの方法をとらざるを得ませんでした。よって、みなさまも、この卵管不妊の治療は難しいとお考えになっていると思います。
しかし、1996年頃から卵管鏡下卵管形成術(FT)法という閉塞している卵管を通過させる画期的な治療法を開発するとともに、その普及のために努めてきました。ようやく、卵管が原因の不妊治療に光が射したのです。この治療は卵管の内側をカテーテルの先端に伸びるバルーンで閉塞している部分を拡げながら、そのバルーンの中央に内蔵されたやわらかい内視鏡(卵管鏡)で卵管を観察して行くという方法です。この道筋が開けたことにより、卵管不妊だと判った方も、すぐに体外受精でなくとも、この卵管鏡下卵管形成術(FT)法で治療し、もう一度自然妊娠にトライしてみることで妊娠の可能性を見いだすことができるようになりました。婦人科の専門ドクターにしっかり相談して、ご自分の不妊の状態を把握してから、有効な治療に進んでください。