妊娠糖尿病
母体と胎児を守るために血糖管理を徹底しましょう。

医療法人恵生会恵生会病院 病院長
宮川 潤一郎先生
妊娠中は体にさまざまな変化が起こります。しかし、その中には、お母さん(母体)や赤ちゃん(胎児)にリスクを伴うものもあります。その一つが妊娠糖尿病です。
妊娠糖尿病と診断されたら、母体と胎児を守るために血糖管理を徹底しましょう。
妊娠糖尿病ってどんな病気?
妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて見つかった「糖尿病に至らないものの、糖の代謝に異常がある」状態をいいます1)。糖尿病のある女性の妊娠や、妊娠検診時に「明らかな糖尿病」と診断された場合とは区別されています。
一般に、妊娠の周期が進むにつれて、胎盤から分泌されるインスリンの作用を抑えるホルモンなどが増え、インスリンの効きが悪くなり、妊娠糖尿病を発症しやすくなります。とくに妊娠糖尿病になりやすい人(表1)1)は注意が必要です。
妊娠糖尿病の検査は、妊娠初期と中期に血液検査(随時血糖値検査)を行い、糖の異常がみられた人には、さらにブドウ糖負荷試験(OGTT)を行って診断します(表2)2)。
妊娠糖尿病になる頻度は、以前は100人に約3人の割合でしたが、2010年を境に100人中12人程度に急増しました 3)。これは、2010年に妊娠糖尿病の診断基準 1)が変更されて、妊娠糖尿病と診断される範囲が広くなり、当てはまる人が4倍に増えたためです。
妊娠中に高血糖が続くとどうなる?
血糖値が高い状態が続くと、母体や胎児にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。母体への影響としては、妊娠高血圧症候群、流産、早産などが起こりやすくなります。また、胎児では、先天性奇形や巨大児、胎児死亡などを引き起こす可能性のあることが知られています(表3)4)。
妊娠糖尿病と診断された妊婦さんは、合併症に不安を感じるかもしれませんが、きちんと血糖をコントロールすれば、合併症の危険は少なくなります3)。