子宮内膜症とは?診察と治療の内容、受診タイミング

目次

子宮内膜症とは

子宮の内側は「子宮内膜」という粘膜で覆われており、ここに受精卵が着床すると妊娠が成立します。いわば、子宮内膜は受精卵のベッドのような役割をもつ組織で、生理周期に合わせて増殖して厚くなり、受精卵が着床できるよう準備をします。子宮内膜は、妊娠しなければ生理の際にはがれ落ち、経血としてからだの外に排出されます。

子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が、卵巣や腹膜といった子宮以外の場所にできてしまう病気です【図1】。

子宮以外の場所で、そうした子宮内膜に似た組織が増殖すると、はがれ落ちてもからだの外に排出するための出口がありません。
そのため、血液が体内でとどまることになり、それが原因で炎症が起こったり、臓器の癒着(くっつくこと)が起こったりして激しい痛みをもたらします。
いったん癒着が起こると、薬で治すことはできないため、手術をしてはがさなくてはなりません。また、癒着は卵管の働きを悪くするため、不妊の原因にもなります。

子宮内膜症は、妊娠が可能な女性の約10%に認められ、特に初経(初潮)の早かった人や、生理の経血量が多い、生理の期間が長い、妊娠や出産の回数が少ない人に多く見られる傾向があります。

【図1】 子宮内膜症の発生部位

子宮内膜症の診断

子宮内膜症は、以下の診察・検査に基づいて診断されます。

問診

自覚症状や不妊の有無などを確認します。

内診

医師が触診し、子宮や卵巣の状況や腹部の痛みなどを診察します。

超音波検査

腟からプローブと呼ばれる細い器具を入れ、子宮や卵巣など体内の状態を観察する画像検査です。

血液検査

血液中の子宮内膜症関連のマーカー(CA 125、TFPI2など)の量を測定します。

MRI血液検査

子宮や卵巣などの状態をさらに詳しく調べる必要がある場合に、追加で行う画像検査です。

腹腔鏡検査

腹部にあけた小さな穴から手術用器具を挿入し、体内の様子を観察する検査です。不妊が疑われる人や画像検査で卵巣にチョコレート囊胞と呼ばれる病変が見つかった場合などに行われます。

なお、これらの検査を行っても、体内の子宮内膜症の病変を発見できないこともあります。ただし、その場合でも、強い生理痛などの症状を伴うときには、子宮内膜症として治療を行うことがあります。

子宮内膜症の治療

子宮内膜症の主な治療法は薬物療法と手術療法です。どの治療を行うかは、年齢や症状のほか、病変の部位、妊娠の希望などを踏まえて決定します。

薬物療法

生理痛などの痛みに対する対症療法や、子宮内膜症の悪化を抑えるホルモン療法などが用いられます【表1】。なお、ホルモン療法中は排卵が止まるため、妊娠の希望がある人には用いることができません。

手術療法

卵巣や腹膜などに子宮内膜症の病変がある場合には手術を行うことがあります。手術では、子宮内膜症の病変を取り除いたり、病変の炎症などによって癒着してしまった組織をはがしたりします。妊娠の希望がなければ子宮全摘出術を行うこともあります。
子宮内膜症に対する手術には、腹腔鏡下手術や開腹手術がおこなわれます。

【表1】 子宮内膜症に対する薬物療法

病院に行くタイミング

子宮内膜症の手がかりのひとつは生理痛です。以前に比べて生理痛がつらくなってきたと感じる場合や、生理のたびに痛みで寝込んでしまう、市販の鎮痛薬を飲んでも痛みが治まらないといった場合には、我慢せずに婦人科を受診しましょう。

また、生理のとき以外の腰痛や下腹痛、性交時や排便時に痛みがある場合にも、子宮内膜症が関係している可能性があるため、婦人科で検査を受けましょう。

さらに、子宮内膜症は不妊の原因になります。そのため、生理痛などの症状がなくても、不妊に悩んでいる方は一度婦人科を受診し、詳しい検査をすることが望まれます。

なお、子宮内膜症は治療を行って症状が改善しても、将来的には再発する可能性の高い病気です。また、卵巣にできた病変は、まれにがんに変化することがあります。そのため、医師と相談しながら、定期的な検査も忘れずに続けましょう。

※生理は、正しくは「月経」といいます。ここでは、皆さんになじみのある「生理」をつかっています。

参考文献

  1. プリンシプル産科婦人科学 1.婦人科編 第3版 武谷雄二、上妻志郎、藤井知行、大須賀 穣 監修, 東京, 株式会社メジカルビュー社, 2019
  2. 病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版 医療情報科学研究所 編集 株式会社メディックメディア, 2018
  3. 日本産科婦人科学会 産科・婦人科の病気 子宮内膜症
    https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=9 (2023年11月閲覧)
  4. 日本産婦人科医会 研修ノート No.102 子宮内膜症・子宮腺筋症 (3)診断
    https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%883%EF%BC%89%E8%A8%BA%E6%96%AD/ (2023年11月閲覧)
  5. 日本婦人科腫瘍学会 市民の皆さまへ 子宮内膜症(卵巣がんとの関係について)
    https://jsgo.or.jp/public/naimaku.html (2023年11月閲覧)
  6. 泉谷知明ほか:日本臨牀 67(Suppl 5.):44-48, 2009

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東京大学医学系大学院 産婦人科学講座
東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科 准教授
平池 修 先生

産婦人科、特に生理に関連した疾患は、頻度が多いことからありふれた疾患と考えられ、我慢する、様子を見る、ということがこれまでずっと続いていました。しかし、ここに示すような色々な疾患と関連することが多いため、あなたのライフプランに大きな悪影響をもたらす可能性があります。ぜひ、知識を備えてあなたの人生を創っていきましょう。

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