卵巣がんとは?診察と治療の内容、受診タイミング

目次

卵巣がんとは

卵巣は子宮の左右にある手の親指ぐらいの大きさの臓器で、卵子を育てたり、ホルモンを分泌したりする役割があります。卵巣にはさまざまな種類の腫瘍が発生し、このうち悪性のものが「卵巣がん」です【図1】

卵巣がんは、初期の段階では症状が少なく、日常生活に支障を来たすことがあまりないため、気がつかないうちに進行してしまう病気です。腫瘍が大きくなると、お腹に張りや痛みを感じたり、腫瘍が周囲の臓器を圧迫し、頻尿や便秘が続いたりすることもあります。

また、腫瘍の付け根の部分がねじれたり、腫瘍が破裂したりすると、激しい腹痛を来たし、緊急手術が必要になることもあります。

卵巣がんは、初経(初潮)の早かった人や、妊娠・出産経験のない人、肥満の人などに多い傾向があります。また、卵巣にできた子宮内膜症[卵巣チョコレート囊胞(のうほう)]が卵巣がんへと変化する場合や、遺伝性の乳がん・卵巣がんが存在することも知られています。

【図1】卵巣がんの発生部位

卵巣がんの診断

卵巣がんは、次の診察・検査に基づいて診断されます。

問診

症状の有無などを確認します。

内診

医師が触診し、卵巣の大きさやかたち、周囲の臓器とくっついていないかなどを確認します。

超音波検査

腟からプローブと呼ばれる細い器具を入れ、卵巣の大きさやがんの内部の状態を観察する画像検査です。

CT/MRI検査

内診や超音波検査の結果から、さらに詳しい検査が必要な場合に行われる画像検査です。

血液検査

血液中の卵巣がんの腫瘍マーカーを測定します。

手術

画像検査だけでは、腫瘍が良性か悪性かの区別が難しいことがあります。この場合には手術で腫瘍の組織を採取して詳しく検査し、診断します。また、手術を行うことで、お腹の中の状態、がんの広がりなどを確認することができ、適切な治療方針の決定につながります。

卵巣がんと診断された場合には、がんの広がり(進行期)により4段階に分類します【図2】

【図2】 卵巣がんの進行期分類

日本婦人科腫瘍学会 「患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版」をもとにテルモ作成

日本婦人科腫瘍学会 「患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版」をもとにテルモ作成

卵巣がんの治療

卵巣がんに対する最初の治療は手術療法が基本です。その後、再発予防のための薬物療法も行われます。

手術療法

基本は卵巣・卵管、子宮、大網(だいもう;大腸や小腸を包む薄い膜)を取り除く手術です。さらに、Ⅰ期では後腹膜リンパ節郭清(かくせい)※1を、Ⅱ~Ⅳ期では、可能な限りがんを取り除く腫瘍減量術が行われます。

なお、妊娠を希望する場合、がんの種類や進行期によっては、がんがないほうの卵巣・卵管や子宮を残せることもあります。ただし、再発のリスクも高くなることから、主治医とよく相談して方針を決定する必要があります。

※1 リンパ節郭清;手術の際に、がんを取り除くだけでなく、がんの周辺にあるリンパ節を切除することです。

薬物療法(化学療法)

複数の抗がん剤を組み合わせる薬物療法(化学療法)が行われます。ごく早期の卵巣がんを除き、手術後にも化学療法が行われます。また、状態によっては手術前に化学療法を行って、がんを小さくしてから手術を行うこともあります。

病院に行くタイミング

卵巣がんは初期症状が少ないため、なんらかの自覚症状を目安に早期発見することは難しい病気ですが、子宮がん検診や妊婦健診のときに行われる内診や超音波検査で偶然発見されることが多いため、定期的に検査を受けるようにしましょう。

また、がんが大きくなることによって生じるお腹の張りや痛み、頻尿や便秘などの症状が続く方は、婦人科で卵巣がんを含む婦人科疾患の検査を受けるようにしてください。

参考文献

  1. プリンシプル産科婦人科学 1.婦人科編 第3版 武谷雄二、上妻志郎、藤井知行、大須賀 穣 監修, 東京, 株式会社メジカルビュー社, 2019
  2. 病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版 医療情報科学研究所 編集, 東京, 株式会社メディックメディア, 2018
  3. 患者さんとご家族のための子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん 治療ガイドライン 第3版 日本婦人科腫瘍学会 編集, 東京, 金原出版株式会社, 2023
  4. 日本産科婦人科学会 産科・婦人科の病気 卵巣腫瘍
    https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=12
    (2023年11月閲覧)
  5. 日本婦人科腫瘍学会 市民の皆さまへ 卵巣腫瘍
    https://jsgo.or.jp/public/ransou.html
    (2023年11月閲覧)

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東京大学医学系大学院 産婦人科学講座
東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科 准教授
平池 修 先生

産婦人科、特に生理に関連した疾患は、頻度が多いことからありふれた疾患と考えられ、我慢する、様子を見る、ということがこれまでずっと続いていました。しかし、ここに示すような色々な疾患と関連することが多いため、あなたのライフプランに大きな悪影響をもたらす可能性があります。ぜひ、知識を備えてあなたの人生を創っていきましょう。

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