生理周期と経血量が普段と違う?生理不順について知ろう

目次

正常な生理周期・生理期間・経血量とは?

「私の経血量は多いのかな?」と感じても、「きっと、みんなもこれぐらいだろう」と思っていませんか?生理のことは話題にしづらく、また他の人と生理周期や経血量を比べる機会はほとんどないため、なかなか異常に気づきにくいものです。まずは、客観的な基準としての“正常範囲“を確認しておきましょう。

生理周期

生理が始まった日を1日目として、次の生理が始まる前日までの期間を生理周期といいます。生理周期には個人差がありますが、正常な生理周期の日数は25~38日(変動は6日以内)で、この正常範囲から外れるのが「月経不順」であり、一般には「生理不順」と呼ばれる状態です。

生理不順のうち、生理周期が長く、39日以上もあいてしまう場合を「希発月経(きはつげっけい)」、24日以内と短い場合を「頻発月経(ひんぱつげっけい)」といいます【図1】。なお、生理が一定期間以上こない場合は「無月経」と呼んでいます。

→詳しくは
・生理がこない?無月経について知ろう

【図1】 生理周期の異常

生理期間

生理の継続期間にも個人差があり、その正常範囲は3~7日とされています。生理日数が8日以上続く場合を「過長月経(かちょうげっけい)」、2日以内で終わる場合を「過短月経(かたんげっけい)」といいます【図2】。

【図2】 生理期間の異常・経血量の異常

経血量

生理の経血量は20~140mLが正常範囲で、通常、140mL以上の場合を「過多月経(かたげっけい)」、20mL以下の場合を「過少月経(かしょうげっけい)」と呼んでいます【図2】。経血量を実際に測ることは難しいため、過多月経と過少月経の目安を【表1】に示します。

【表1】

生理周期や経血量の異常の原因

通常、生理は卵胞ホルモン(エストロゲン)、黄体ホルモン(プロゲステロン)といった女性ホルモンによってコントロールされています。その分泌に関わる視床下部、脳下垂体、卵巣などに異常があるとホルモンバランスが崩れて生理周期の異常の原因になります。

なかでも視床下部はストレスの影響を受けやすく、精神的なストレスを受けることによってその働きが乱れ、ホルモンのバランスが崩れることもあります。また、激しい運動や無理なダイエットも生理周期の異常の原因となります。そのほか、子宮や卵巣、甲状腺などの病気が原因になることもあります。経血量の異常の主な原因は、子宮や血液などの病気です。

生理周期や経血量の異常の対策

生理周期・経血量の異常に対する治療は、その原因や症状に加え、年齢やライフスタイル、妊娠を希望しているかによって異なります。

希発月経・頻発月経

年齢、生理痛や貧血の有無、妊娠を希望しているかどうかによって治療方針を決定します。初経(初潮)から数年以内は、卵巣機能が十分に成熟していないため、排卵せずに生理周期が不安定になりがちです。このため、経過観察だけを行い、成長を待ってから治療を検討することもあります。

思春期を過ぎても生理周期が安定しない場合は、さまざまなホルモン検査や超音波検査などを行い、その原因を調べます。また、基礎体温の記録から排卵があるかを確認します。生理周期を正常化するために女性ホルモン製剤を使用したり、妊娠を希望する場合には排卵誘発剤を用いたりすることもあります。

なお、極端なダイエットや激しいスポーツをしている人では、視床下部の機能が低下して生理がなかなか来ないことがあります。その場合には、食生活や運動量の見直しも必要になります。

生理痛によって生活に支障を来たしているのであれば、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP製剤)によって生理痛を抑えたり、生理周期をコントロールしたりすることがあります。また、貧血の症状がある場合には、鉄剤を使用することもあります。

更年期にさしかかると、生理周期が短くなる傾向があります。閉経前の時期であれば、まず子宮体がんではないかを調べる検査を行い、がんが否定的であれば対症療法、または経過観察を行います。

過多月経(経血量が多い)

子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮体がん、子宮内膜ポリープなどが原因で経血量が多くなることがあるため、さまざまな検査を行って原因を調べます。生理中の出血を抑えるため、血を止めるような働きをする薬剤を服用したり、貧血の症状がある場合には鉄剤を使用したりすることもあります。

また、子宮内膜の増殖を抑える働きのある、LEP製剤や、黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト)、LNG-IUS(レボノルゲストレル子宮内放出システム)を使用し、経血量を抑えることもあります。

過少月経(経血量が少ない)

過少月経は必ずしも病気というわけではなく、排卵が周期的にあれば問題はないことも多いものです。しかし、子宮に異常がある場合や、ホルモンバランスが乱れていることも考えられるため、しっかりと検査をしたうえで、症状に合わせた治療を行います。なお、「普段より経血量が極端に少ない」という場合は、妊娠の可能性もあります。

病院に行くタイミング

生理周期や経血量の異常は誰にでも起こり得ることで、ストレスや体調の変化などをきっかけに一時的に異常があらわれることもあります。ただし、そうした生理周期や経血量の異常が長期間続くようであれば、たとえ日常生活に支障を来たしていなかったとしても、婦人科を受診するようにしましょう。

なお、卵巣がまだ十分に成熟していない思春期や、卵巣の機能が低下してくる更年期の生理周期・経血量の異常は年齢的なものですから、あまり心配しなくてもよいでしょう。

しかし、更年期に入っても頻繁に出血するような場合は、子宮体がんなどの可能性もあるため、頻発月経と自己判断せずに早めに婦人科を受診しましょう。また、基礎体温表は医師にとって正常に排卵しているかどうかを確認するための判断材料になります。基礎体温表を記録している場合は、受診する際に持参するとよいでしょう。

※生理は、正しくは「月経」といいます。ここでは、皆さんになじみのある「生理」をつかっています。

参考文献

  1. 病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版 医療情報科学研究所 編集, 東京, 株式会社メディックメディア, 2018(審査用P24、P26、P27)
  2. 日本女性心身医学会 一般のみなさまへ 女性の病気について 月経不順
    https://www.jspog.com/general/details_07.html
    (2023年11月閲覧)
  3. 産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023

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九州大学大学院医学研究院生殖病態生理学分野(産科婦人科)
九州大学病院 産科婦人科  教授
加藤 聖子 先生

基礎体温は定期的につけるだけで、あなたの体の状態、リズムがわかります。そのしくみを知って有効に利用しましょう。

九州大学大学院医学研究院生殖病態生理学分野(産科婦人科)
九州大学病院 産科婦人科  助教
河村 英彦 先生

日々の体調管理や妊活に基礎体温をぜひ役立ててください。普段の生活では気付きにくい体のことを、ホルモン分泌の様子を教えてくれます。

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