基礎体温の変化で、悩みの原因や妊娠の可能性を知ろう

目次

基礎体温を記録していれば分かるからだの変化があるの?

生理周期が正常範囲内で、排卵も起きていれば、基礎体温表には低温期(相)と高温期(相)の二相性がみられ、低温期と高温期の温度差は0.3℃以上あります。 ところが、ずっと低温期が続いたままで一相性となっている場合は、生理はあるのに排卵を伴っていない「無排卵周期症(むはいらんしゅうきしょう)」の可能性があります。また、二相性になっていて排卵もあるものの、高温期の後半に体温が下がったり、高温期の期間が短いまま生理が起きたりするような場合は、女性ホルモンである黄体ホルモン(プロゲステロン)がうまく分泌されていない「黄体機能不全(おうたいきのうふぜん)」かもしれません【図1】

※ただし、二相性の基礎体温のすべてが排卵を保証するわけではなく、卵胞が排卵しないまま黄体化し体温が上昇する黄体化未破裂卵胞(おうたいかみはれつらんぽう)の場合もあります。

※ただし、二相性の基礎体温のすべてが排卵を保証するわけではなく、卵胞が排卵しないまま黄体化し体温が上昇する黄体化未破裂卵胞(おうたいかみはれつらんぽう)の場合もあります。

【図1】 基礎体温の変化でわかる病気

【図1】 基礎体温の変化でわかる病気 【図1】 基礎体温の変化でわかる病気

無排卵周期症とは?

生理のような出血はあるのに、排卵がない状態です。生理周期は不順なことが多く、生理の持続期間も短かったり長かったりします。無排卵周期症は、卵巣機能がまだ十分に成熟していない思春期や、卵巣機能が低下しつつある更年期にもみられますが、妊娠可能な時期の無排卵は不妊の原因になるので注意が必要です。妊娠を希望している場合は、無排卵になっている原因を調べたうえで、排卵を誘発する治療が行われます。また、妊娠を希望していない場合でも、貧血や生理不順などで日常生活に支障を来たしている場合は、治療の対象となります。

黄体機能不全とは?

黄体からのプロゲステロンが十分に分泌されず、子宮内膜がうまく発育しない状態です。卵子が子宮内膜に着床できなかったり、妊娠の維持が難しくなったりするので、不妊や不育症の原因となりえます。黄体機能不全かどうかは、基礎体温表のグラフの変化をみたり、黄体期のホルモン量を測定したりして診断されます。妊娠を希望している場合は、プロゲステロンを補充する治療などが行われます。

基礎体温表がどのようなパターンにあてはまるのかをみることで、そのときの健康状況や、将来の妊娠の可能性を知る手がかりになります。基礎体温表が図1のようなきれいなパターンではなくガタガタしていても、生理の時期に基礎体温が少し下がって低温期が続き、それから高温期がしばらくあるというように、なんとなくでも二相になっていればそれほど気にする必要はありません。ただし、無排卵周期症や黄体機能不全は不妊の原因になりますから、少しでも不安がある方は、基礎体温表を持って婦人科の医師に早めに相談するようにしましょう。

基礎体温表を見る時の4つのポイント!

POINT 1
高温相が10日以上、続いていますか?
POINT 2
高温相と低温相の差が0.3℃以上ありますか?
POINT 3
高温相の後半で急に温度が下がることはありませんか?
POINT 4
低温相から高温相へ移るのは3日以内ですか?

妊娠したら基礎体温はどうなるの?

妊娠すると、プロゲステロンが排卵後にできた黄体から分泌し続けるため、基礎体温の高温相が続きます。高温相が17日以上続く場合は、妊娠の可能性があります。

※生理は、正しくは「月経」といいます。ここでは、皆さんになじみのある「生理」をつかっています。

参考文献

  1. 基礎体温計測推進研究会 基礎体温でわかる女性のからだ
    http://www.kisotaion.org/kbow/index.htm (2023年11月閲覧)
  2. 病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版 医療情報科学研究所 編集 株式会社メディックメディア(p25、33、34)
  3. 日本女性心身医学会 一般のみなさまへ 女性の病気について 月経不順
    https://www.jspog.com/general/details_07.html (2023年11月閲覧)
  4. 福田雄介, 片桐由起子:産科と婦人科 84(3):261-266, 2017
  5. 生殖医療の必修知識2023 一般社団法人 日本生殖医学会.(p77)

監修者のご紹介 ▶︎ 監修者の詳細ページへ

九州大学大学院医学研究院生殖病態生理学分野(産科婦人科)
九州大学病院 産科婦人科  教授
加藤 聖子 先生

基礎体温は定期的につけるだけで、あなたの体の状態、リズムがわかります。そのしくみを知って有効に利用しましょう。

九州大学大学院医学研究院生殖病態生理学分野(産科婦人科)
九州大学病院 産科婦人科  助教
河村 英彦 先生

日々の体調管理や妊活に基礎体温をぜひ役立ててください。普段の生活では気付きにくい体のことを、ホルモン分泌の様子を教えてくれます。

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