妊娠に必要な準備とは?プレコンセプションケアについて

目次

妊娠したいと思ったら、まず何から始めたらいいの?

一般に「妊娠を望む男女が、赤ちゃんを授かるために行うさまざまな準備」の総称を妊娠活動といいますが、最近ではこれを略して“妊活”と呼ぶことも多くなりました。ただ、妊活といっても、何から始めたらいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。

基礎体温を測定し、その記録から排卵日を予測して・・・という活動に取り組むことも重要ですが、パートナーで子どもをもつことについて話し合ったり、妊娠に関する正しい知識を学んだり、さらには食事や生活習慣を見直して体調を整えたりするという事前準備も大切です。妊活は二人で取り組むものです。何から始めたらいいのか迷ったときは、まずは妊娠に向けてお互いの希望や考えをパートナーと話し合う時間をもつようにしてはいかがでしょうか。

なお、健康な男女が避妊をせず性生活を続け、1年を過ぎても妊娠しない場合を「不妊症」といいます。しかし、妊娠を希望し、夫婦で妊活を試みてもなかなか妊娠しない場合は、1年を待たずに病院での検査や治療を始めるほうがよいでしょう。

→詳しくは、・不妊治療の種類と流れとは?

妊娠に向けて基礎体温をどのように活用したらいいの?

妊活の基本ともいえるのが、基礎体温の測定と記録です。たとえば生理が28日周期で排卵がある場合、生理初日(1日目)から排卵まで通常12~14日間は低温期が続きます。そして黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用によって、基礎体温が低温期より約0.3~0.5℃上昇する高温期に入ります。

排卵が起きるのは低温期から高温期に移行するころで、基礎体温はいったん下降し、それから上昇し始めます。一般に排卵の3〜4日前から排卵後の1〜2日の間は妊娠しやすい時期といわれており、このタイミングで性交渉をすると妊娠する確率が高まります【図1】。

【図1】 基礎体温の変化と生理周期

また、排卵時期を予測するのには、「排卵日予測検査薬」を補助的に用いるのもよいでしょう。この排卵日予測検査薬は、排卵を促す黄体形成ホルモン(LH)が排卵日の1~2日前に急増するという“LHサージ“を捉えるもので、最も妊娠しやすい時期である排卵日を約1日前に予測することができます。
しかし、月経不順や月経間隔が長い方の一部には、「排卵日予測検査薬」は、あまり有効ではない場合があります。

基礎体温表と排卵日予測検査薬を組み合わせ、生理周期からあらかじめ排卵日のパターンをつかんでおくとよいでしょう。

→詳しくは
・基礎体温とは?基礎体温でからだのどのようなことが分かるの?

「プレコンセプションケア」をご存じですか?

プレ(Pre)は「~の前の」、コンセプション(Conception)は「妊娠・受胎(じゅたい)※1」という意味です。つまり、「プレコンセプションケア」というのは「妊娠前からの健康管理」のことで、将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの健康に向き合うことを意味します。
やせや肥満、喫煙、持病、高齢といったリスク因子がある女性が妊娠した場合、流産※2、早産※3、低出生体重児※4、先天異常※5などの発生頻度が通常よりも高くなります。

そのため、妊娠前から自分の健康状態やリスク因子を把握して、早めにケアを始めてもらうことが大切です。また、持病などによって妊娠が難しい人も、プレコンセプションケアによって妊娠の道を探ることができるかもしれません。国立成育医療研究センターが作成している「プレコン・チェックシート」で確認してみましょう。

国立成育医療研究センター「プレコン・チェックシート」
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/pcc_check-list.html

※1:おなかの中に新しい命を授かること
※2:妊娠したにもかかわらず、妊娠の早い時期に赤ちゃんが亡くなってしまうこと。定義としては、妊娠22週(赤ちゃんがお母さんのお腹の外では生きていけない週数)より前に妊娠が終わることをすべて「流産」といいます。
※3:日本では妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を早産と呼びます。
※4:出生体重 2500g 未満の新生児
※5:生まれつき、からだや内臓のかたち、はたらきに生まれつきある異常がある状態

プレコン・チェックシート

● プレコン・チェックシート(女性用)

もっとすてきな自分になるために、未来の家族のために、できることから始めて、1つずつチェック項目を増やしていきましょう。
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/pcc_checksheat_f.pdf

● プレコン・チェックシート(男性用)

男性にもプレコンセプションケアが必要です!妊娠は女性だけの問題ではありません。男性も以下の項目をチェックし、健康維持につとめて赤ちゃんのできやすい体質になりましょう。
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/pcc_checksheat_m.pdf

国立成育医療研究センター「プレコン・チェックシート」
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/pcc_check-list.html

妊娠を希望するなら、日ごろからの健康管理も大切です

妊娠を希望する場合、基本的な健康管理は欠かせません。妊娠に備えて行った方がよい定期的な検査項目を下表に示します【表1】。

また、喫煙は卵巣機能の低下を早め、骨盤内の血流を悪くし、卵巣機能や子宮環境に悪影響を及ぼす可能性があります。日ごろから生活習慣全般について体内リズムが乱れないような規則正しい生活を送る、禁煙するなど、赤ちゃんが欲しいと思ったときによい状態で妊娠できるよう、全身の健康管理につとめましょう。

【表1】 妊娠前に備えて行う検査

女性が健康でいるための生活習慣

  1. 1.適正体重を守る
  2. 2.栄養バランスを整える
  3. 3.適度に運動する
  4. 4.禁煙する・受動喫煙を避ける
  5. 5.アルコールは控えめに
  6. 6.ストレスを溜め込まない

厚生労働省/SMART LIFE PROJECT
『「プレコンセプションケア」をみんなの健康の新常識に』
より引用

→詳しくは
・基礎体温で自分のからだを知ろう。セルフケアってどんなことをしたらいい?

※生理は、正しくは「月経」といいます。ここでは、皆さんになじみのある「生理」をつかっています。

参考文献

  1. 病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版 医療情報科学研究所 編集, 東京, 株式会社メディックメディア, 2018
  2. 日本生殖医学会 一般のみなさまへ 生殖医療Q&A(旧不妊症Q&A) Q2.不妊症とはどういうものですか?
    http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa02.html (2023年12月閲覧)
  3. はらメディカルクリニック スタッフコラム・ブログ 妊活は何から始めたらいい?妊娠しやすいタイミングや体づくりのポイントを解説
    https://www.haramedical.or.jp/column/staff/ninkatsu.html (2024年1月閲覧)
  4. 患者さんからの質問に自信を持って答える不妊治療Q&A 片桐由起子 編著, 東京, 日本医事新報社, 2023
  5. 国立成育医療研究センター プレコンセプションケアセンター プレコン・チェックシート
    https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/pcc_check-list.html (2023年12月閲覧)
  6. 片桐由起子、福田雄介、森田峰人 第3章 生殖内分泌分野 女性不妊症 産科と婦人科 82 :335 -341 , 2015
  7. 健康寿命をのばそう SMART LIFE PROJECT 健康イベント&コンテンツ 「プレコンセプションケア」をみんなの健康の新常識に
    https://www.smartlife.mhlw.go.jp/event/womens_health/2021/lecture2

監修者のご紹介 ▶︎ 監修者の詳細ページへ

東邦大学医学部 産科婦人科学講座
東邦大学医療センター大森病院 産婦人科 教授
片桐 由起子 先生

当サイトでは、基礎体温を中心に女性の健康に関する情報を提供しています。基礎体温測定は、性成熟期の女性が自分自身で身体のリズムを知ることができる指標です。女性特有の病気や妊孕性(妊娠する力)に関係する隠れたサインに気がつく契機になるかもしれません。現在と未来の健康のためにサイトを利用していただけると大変うれしく思います。

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