不妊症とは?原因には何があるの?

目次

不妊とは

日本では、不妊を心配したことがある夫婦は39.2%で、夫婦全体の約2.6組に1組の割合になります。また、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は22.7%で、夫婦全体の約4.4組に1組の割合になります※1。

「不妊」とは、「妊娠を望む健康な男女が、ある一定の期間、避妊をすることなく性交渉を行っているにもかかわらず、妊娠には至らず、医学的な治療を必要とする場合」と定義されています。日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」としています。
ただし、これは「1年ぐらいは治療をせず、様子をみていてもよい」ということではありません。男女ともに年齢が上がるにつれて妊娠しづらくなることを考えると、治療開始を先送りするよりも、「不妊かもしれない」と思ったら、早めに検査や治療について検討してみましょう。

※1:厚生労働省 令和4年度 不妊治療を受けやすい休暇制度等環境整備事業 「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001073887.pdf
(2023年10月閲覧)

不妊の原因

妊娠が成立するためには、卵子と精子が出会い、受精して着床するまで、多くの条件がそろう必要があります。このため、その途中のいずれかの段階で不具合があると不妊となりえます。不妊症は多彩な要因で起こり、多くの因子が重複していることもあれば、現時点で実施可能なさまざまな検査をしても原因が特定できない “原因不明不妊症“もあります。

→詳しくは
・妊娠するときからだで起きていること。女性の生殖器の仕組みを知ろう

女性の不妊症の原因

女性の不妊症は、排卵、卵管、子宮、頸管、免疫などに問題があって起こるとされています【図1】。それぞれの要因(因子)について順にみていきましょう。

排卵因子

排卵するまでの過程に異常が起き、卵子が育たない、また育ってもうまく排卵ができない状態です。なお、排卵しているかどうかは、基礎体温を測定し、継続的に記録することである程度把握できます。

→詳しくは
・生理周期の仕組みとは?基礎体温やホルモンの変化

卵管因子

精子が卵子に向かい、また受精卵(胚)が子宮に向かうための道である卵管が炎症などによって狭くなっていたり(狭窄)、閉じていたり(閉塞)、あるいは卵管周囲や卵管采周囲が腹膜などとくっついていて(癒着)、受精卵の輸送ができなくなっている状態です。

子宮因子

子宮筋腫、子宮内膜ポリープといった問題があり、受精卵が子宮に着床しにくい状態です。

頸管因子

排卵期には、腟と子宮腔をつなぐ部分である頸管(けいかん)から粘り気のある頸管粘液が分泌され、精子の運動を促して通りやすくします。しかし、頸管粘液の分泌が不十分だと精子がうまく進めず、妊娠しにくくなってしまいます。

免疫因子

からだが精子を異物だと判断し、抗精子抗体(こうせいしこうたい)をつくってしまうことをいいます。

【図1】 不妊症の原因

男性の不妊症の原因

男性の不妊症の原因としては、造精機能障害、性機能障害、精路通過障害などがあります【図1】。

造精機能障害

精巣の精子を作る機能が低下している状態です。射精される精液中の精子の数が少なかったり、運動能力が低下していたりします。

性機能障害

勃起ができず挿入できない、勃起はするものの射精がうまくいかない、あるいはその両方のことを指します。

精路通過障害

精巣で精子は作られているものの、精子の通り道(精路)の一部が閉塞していることで、精液中に精子がない状態です。

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会 産科・婦人科の病気 不妊症
    https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=15
    (2023年10月閲覧)
  2. 日本生殖医学学会 一般のみなさまへ:生殖医療Q&A Q2. 不妊症とはどういうものですか?
    http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa02.html
    (2023年10月閲覧)
  3. 厚生労働省 令和4年度 不妊治療を受けやすい休暇制度等環境整備事業 「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」
    https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001073887.pdf
    (2023年10月閲覧)
  4. 日本生殖医学学会 一般のみなさまへ:生殖医療Q&A Q4. 不妊症の原因にはどういうものがありますか?
    http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa04.html
    (2023年10月閲覧)
  5. 病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版 医療情報科学研究所 編集 株式会社メディックメディア(確認用:p231、232)

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東邦大学医学部 産科婦人科学講座
東邦大学医療センター大森病院 産婦人科 教授
片桐 由起子 先生

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