子宮筋腫とは
子宮筋腫は、子宮の筋層から発生する良性の腫瘍です。その大きさや数には個人差があります。また、子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)や子宮内膜症などの他の生理に関係した子宮の病気を合併する人もいます。
子宮筋腫の主な自覚症状は、腹部の圧迫症状、生理痛、経血の量が多い、不妊症などです。また、大きい子宮筋腫は周辺の臓器を圧迫し、頻尿や便秘、腰痛などを引き起こすこともありえます。しかし、子宮筋腫は半数の人は無症状で、子宮筋腫があっても気づかず、婦人科検診や妊娠をきっかけに子宮筋腫が偶然見つかることも多いです。
子宮筋腫は、発生する場所によって大きく3つのタイプに分かれ、それぞれ「筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ)」「粘膜下筋腫(ねんまくかきんしゅ)」「漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)」と呼ばれます。これらのタイプによって症状の現れ方や治療法が異なります【図1】
また、複数のタイプを同時に合併することもよくあります。
子宮筋腫は、30代以上の女性の3人に1人に見られる頻度の高い病気で、特に初経(初潮)の早かった人や、妊娠の回数が少ない人などに多い傾向があります。
【図1】 子宮筋腫の3つのタイプ
子宮筋腫の診断
子宮筋腫は、以下の診察・検査に基づいて診断されます。
問診
生理痛の強さや経血量の増大などの自覚症状、妊娠希望の有無などを確認します。
内診
医師が触診し、子宮の大きさ、形、硬さ、子宮筋腫の位置などを診察します。
超音波検査
プローブと呼ばれる器具を用いて、腹部や腟から子宮の状態を観察する簡易な画像検査です。
血液検査
血液検査で貧血の有無や腫瘍マーカーなどを調べます。
MRI血液検査
筋腫が大きい場合や手術に向けて筋腫の状態をさらに詳しく調べる必要がある場合に、追加で行う画像検査です。
ただし、子宮筋腫と悪性の子宮肉腫との区別が難しいことがあります。そのため、MRI検査の結果、年齢や筋腫の大きさ、筋腫が大きくなるスピードなどを踏まえて総合的に診断します。
子宮筋腫の治療
【図2】 子宮筋腫の治療
子宮筋腫の治療は、症状の有無や妊娠希望の有無、悪性の疑いがあるかなどに基づいて決定されます【図2】
なお、子宮筋腫は良性の病気であるため、日常生活に影響を及ぼす症状がなく、筋腫があまり大きくなければ、積極的な治療を行わず、定期的な検診のみで経過観察を続けることもあります。
子宮筋腫の主な治療法は手術療法と薬物療法です。
手術療法
手術療法には、子宮をすべて取る子宮全摘術(しきゅうぜんてきじゅつ)と、筋腫の部分だけを切除する筋腫核出術(きんしゅかくしゅつじゅつ)があります。妊娠を希望する人に対しては筋腫核出術を行いますが、すべての筋腫を取り除くことはできないため、再発する可能性があります。
薬物療法
薬物療法には、女性ホルモンの分泌を抑えて筋腫を小さくする偽閉経療法(ぎへいけいりょうほう)と、症状を緩和する対症療法があります【表1】。
【表1】 子宮筋腫の薬物療法
なお、偽閉経療法や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬は、治療中に排卵が止まるため、妊娠の希望がある場合には用いることができません。
病院に行くタイミング
生理痛がつらく、生理の期間は鎮痛薬が手放せない、経血の量が多く、貧血ぎみであるなどの症状がある場合には婦人科を受診しましょう。子宮筋腫は良性の病気であるため、手術などの積極的な治療が必要ない人もいますが、生理痛や貧血を改善するだけでも、日常生活の負担は軽くなります。
また、子宮筋腫が不妊の原因となることもあるため、不妊に悩む方も、まずは婦人科で検査を受けることが大切です。
一方、薬物治療や手術を受けても、すべての症状が一度に改善するとは限りません。閉経するまでは、筋腫がまた大きくなる可能性もあるため、医師とよく相談しながら通院や治療を続けていきましょう。
※生理は、正しくは「月経」といいます。ここでは、皆さんになじみのある「生理」をつかっています。
参考文献
- ①プリンシプル産科婦人科学 1.婦人科編 第3版 武谷雄二、上妻志郎、藤井知行、大須賀 穣 監修, 東京, 株式会社メジカルビュー社, 2019(審査用;p334)
- ②病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版 医療情報科学研究所 編集 株式会社メディックメディア, 2018
- ③日本産科婦人科学会 産科・婦人科の病気 子宮筋腫
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=8 (2023年11月閲覧) - ④日本産科婦人科学会編 女と男のディクショナリーHUMAN+ 青年期03若い女性のトラブル①子宮筋腫
https://www.jsog.or.jp/public/human_plus_dictionary/pdf/2_3.pdf (2023年11月閲覧) - ⑤日本婦人科腫瘍学会 市民の皆さまへ 子宮筋腫
https://jsgo.or.jp/public/kinshu.html(2023年11月閲覧)
監修者のご紹介 ▶︎ 監修者の詳細ページへ
東京大学医学系大学院 産婦人科学講座
東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科 准教授
平池 修 先生
産婦人科、特に生理に関連した疾患は、頻度が多いことからありふれた疾患と考えられ、我慢する、様子を見る、ということがこれまでずっと続いていました。しかし、ここに示すような色々な疾患と関連することが多いため、あなたのライフプランに大きな悪影響をもたらす可能性があります。ぜひ、知識を備えてあなたの人生を創っていきましょう。