更年期と婦人科受診
①婦人科受診のタイミング
更年期の女性が感じる症状は、多様で変化しやすく、他の病気と症状が似ていることもあるため、どのようなタイミングで婦人科を受診すればよいのか、わからないことも多いかもしれません。
婦人科を受診するタイミングのひとつは「生理周期が乱れてからだやこころに何らかの気になる症状がでたとき、生理の量がこれまでと変わってきたときや生理時期以外の出血があるとき」です。
基礎体温をつけていれば、高温期(相)・低温期(相)の変化も感じるかもしれません。生理周期が乱れるのは、閉経が近づき、卵巣の機能が低下してきたサインです。
また、出血が多い場合には、なんらかの病気が原因で起きているのかを見分ける必要もあります。特に更年期には、子宮体がんや卵巣がんを発症することが多く、不正出血があれば婦人科で検査を受けることが大切です。

②更年期障害の診断
婦人科では、主に【表1】のような診察・検査を行います。更年期にはさまざまな要因によって多彩な症状が現れるため、更年期症状として判断するためには、その症状が病気によって引き起こされているものではないことを明らかにすることが大切です。このため、更年期障害だけでなく、がんやうつ病といった他の病気の可能性を調べる目的で、必要に応じて追加の検査を行うこともあります。
また、更年期には卵巣機能の低下に伴って、血中の卵胞ホルモン(エストロゲン)が低下し、逆に卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)が増加します。しかし、これらのホルモンの濃度は正常でも変動しているので、ホルモン測定は更年期診断の補助手段としては有用ですが、確定診断には使われません。
したがって、更年期にあたる年代の女性で、卵巣機能の低下以外の異常が認められないにもかかわらず、生活に支障を及ぼすようなからだやこころの症状がある場合には、治療が必要な「更年期障害」と診断されます。
【表1】更年期障害の診断のための検査


③更年期障害の治療
更年期障害に対しては、主に【表2】のような治療が行われます。なお、更年期障害の症状は個人差が大きいことから、医師と相談しながら自分に合った治療法を見つけていくことになります。
【表2】更年期障害に対する主な治療法


更年期と対処法
①悪化する前に対処する
更年期の女性は、ホルモンの変化に伴う体調不良を感じやすいにもかかわらず、家庭や社会での役割も多いため、自身の健康管理を後回しにしてしまいがちです。
しかしながら、更年期のからだの変化は、一時的な体調不良だけでなく、骨密度が下がったり、動脈硬化が進んだりする要因になり、閉経以降の健康にも大きな影響を及ぼします。そのため「忙しいから」と放置せず、悪化する前に対処していきましょう。
②セルフケアの重要性
更年期の症状の改善に向けては、婦人科での検査や治療に加えて、生活の中で心がける「セルフケア」も重要な役割を担います。
たとえば、食事・運動・睡眠といった生活習慣を見直して整えていくことは、更年期症状の改善や、閉経後にかかりやすい骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や生活習慣病、がんなどを予防することにつながります【表3】。
【表3】更年期に心がけたいセルフケアのポイント


毎日のセルフケアや婦人科での治療などを行いながら、更年期を前向きに乗り切り、その先の人生を健やかに過ごしていきましょう。
監修者のご紹介 ▶︎ 監修者の詳細ページへ
東京大学医学系大学院 産婦人科学講座
東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科 准教授
平池 修 先生
産婦人科、特に生理に関連した疾患は、頻度が多いことからありふれた疾患と考えられ、我慢する、様子を見る、ということがこれまでずっと続いていました。しかし、ここに示すような色々な疾患と関連することが多いため、あなたのライフプランに大きな悪影響をもたらす可能性があります。ぜひ、知識を備えてあなたの人生を創っていきましょう。